メディア翻訳の仕事の流れ
ここではメディア翻訳の仕事の流れについて紹介していくことにしましょう。
とは言え、一口にメディア翻訳と言っても、その内容は実に多岐にわたっています。
メディア翻訳の中でも新聞や雑誌記事の翻訳の場合、先に紹介した出版翻訳、或いは実務翻訳に準ずる部分が大きいので、ここではメディア翻訳の中でも映像翻訳と呼ばれる仕事について、中でも映画とビデオ、それにDVDの例を参考に、メディア翻訳の仕事の流れを見てみることにしましょう。
劇場公開用映画の場合は、日本でもハリウッド映画を始め、毎年数多くの海外の映画が劇場で公開されます。
その中には所謂日本語吹き替え版も有りますし、また音声は原版のままで画面に日本語字幕を入れているケースも有ります。
ですがいずれにせよメディア翻訳者の出番となります。
多くの映画は映画会社が制作し、その国の配給会社と、さらに日本の配給会社を経由して、各地の映画館で上映されることになります。
その際に必要となる字幕翻訳、或いは吹き替え翻訳は、国内の映画配給会社から直接翻訳者に、または日本語版制作会社を通じて依頼されるケースが殆どです。
それではその場合の納期は一体どのくらいなのでしょうか。
例えば90分から100分程度の作品であるならば、字幕なら通常1週間、吹き替えでは1~2週間ほどが一般的なようです。
また日米同時公開の劇場用映画等の場合、わずか3日か4日で大作を1本仕上げることもあると言います。
いずれにせよ翻訳に要する時間もあまりなく、翻訳作業はなかなか大変であると言えます。
ビデオ・DVD 作品の場合
先に触れた劇場映画がビデオ、DVD化されることはよく有ります。
劇場で公開された映画が、すぐさまビデオやDVDになったりします。
映画をビデオ化するに際しては、所謂「ビデオ化権」が発生します。
映画の配給会社自らがそのビデオを制作する場合には、ビデオ化権は配給会社にとどまることになりますが、一方でこの権利をビデオソフト・メーカーに売却するケースも多くあります。
前者の場合でしたら、その際に必要な翻訳は、劇場公開用映画のケースと同様、配給会社から翻訳者に外注される場合が殆どです。
一方で後者のケース、即ちビデオソフト・メーカーが映画のビデオ化権を購入、取得しているケースでは、メーカーからさらに外部の日本語版制作会社へと、全面的に制作が委託されることが多くなっています。
この場合制作会社は社内で翻訳処理をするか、或いは必要に応じて外部の翻訳者に字幕や吹き替えを依頼するケースが多くなっています。
ですがいずれの場合でも、既に劇場公開された映画作品の字幕や吹き替えは、ビデオや DVD になる際に二次使用されることがあります。
それでは翻訳者が映画字幕を作成する際、一体どのような作業を行なっているのでしょうか。
どんな順序で字幕が出来上がっていくのでしょうか。
私達は普段何気なく外国映画を見て、そうして日本語字幕を見ていますが、当然ながら私達は字幕を通じて映画を見るわけですから、ここで翻訳者、字幕の製作者は大きな役割を果たしていることになります。
それでは字幕映画はどうやって出来上がるのかについて、これから皆さんのそのちょっとした舞台裏を紹介していくことにしましょう。
劇場公開用映画の字幕翻訳の場合、翻訳者はまず作品を見ながら、支給された台本にセリフの切れ目を入れていきます。
この作業は翻訳の世界では「ハコ書き」と呼ばれています。
一つひとつの字幕がどこで切れるのか、暫定的に決めるのがその作業の目的です。
それからプロダクションではこれを基にして、個々のセリフがどのくらいの長さで、そしてフィルムのどこに入るのかを示す「スポッティング・リスト」を作成します。
翻訳者はリストを参考にしながら、同時に各セリフの文字数を考えつつ、実際の翻訳作業を行っていきます。
そして映画を見てひと通りの翻訳が完成すると、再び作品を見ながら翻訳者自身で訳稿をチェックし、そして必要に応じて修正を加えていきます。
それが字幕カードに書き写され、フィルムに焼き付けられ、翻訳字幕が完成することになります。
その後、映画配給会社の担当者をも交えて3回目の試写を行い、再度必要な修正を施した上で、最終的に劇場公開用のプリントが完成するのです。
如何でしたか。
私達が普段目にしている映画の翻訳字幕も、このようななかなか大変な作業を経て完成しているのです。